いまさら聞けない・・・米国大統領選を解説!
2020年は米国大統領選で盛り上がっておりますが、いまいち仕組みや争点がわからない…って方いらっしゃいませんか?
私も断片的な情報ばかりでしっかりわかっていないような気がしたので、今回、纏めてみましたので宜しければ、ご参考にして下さい。
大統領選の仕組み
大統領ってどんな存在??
アメリカには50の州があり、各州が自治権をもっております。つまり、それぞれが「ほとんど独立した国家」のような権利(行政、立法、司法)を持っています。それらを纏めて調整する役割が連邦政府になります。
その連邦政府にも立法、司法、行政の3つの機能があり、行政を一人で司るのが大統領です。日本では、行政権は「内閣」が持っていますので、内閣のメンバーである大臣が全員一致で同意しなければなりませんが、アメリカの大統領は、その権限を一人で持っているのです。
大統領の権限は?
大統領には大きく3つの権限があると思います。
①行政権
行政においては2つの権限があります。1つは、各省に「法律に基づき、~~を執行せよ」と指示する「大統領令」を発動する権限です。もう一つは、「軍の最高司令官」としての権限です。(宣戦布告は議会が権限を持っています。)
②法律拒否権
大統領は、「法律拒否権」という権限を持っており、議会が可決した法律案を突き返す権限もあります。(大統領が法律拒否権を発動しても、議会には再可決権があり、2/3以上の賛成で上下両院が可決すれば拒否権を覆すことが出来ます。)
③連邦公務員の人事権
4,000人の連邦公務員の人事権をもっており、そこには連邦裁判所の裁判官を任命する権利も含まれます。
大統領の権限は非常に大きく見えますが、日本の首相と違って、議会を解散させる権利がありません。従い、リーダーシップを発揮して、議会の承認を得られないと、議会が、大統領の意に介さない法律を立法することが出来てしまいます。
大統領選の流れ
大統領の任期は1期4年で途中降板はありません。従い、4年に一回大統領選は行われます。(大統領の任期は2期8年まで在任可能(3選目は禁止))
アメリカでは二大政党制が引かれており、民主党と共和党、それぞれが予備選挙で大統領候補を決め、それぞれの大統領候補が本選挙を行い、大統領が決定されます。
予備選挙
予備選挙の仕組みは、「各州の一般有権者が各州の代議員を選ぶ(各党予備選挙・各党員集会)」→「各州の代議員が大統領候補を全国大会で選ぶ」という間接選挙となっております。時系列で並べると以下のようになります。(日にちは2020年の日程です。)
- 1月 大統領候補が立候補
- 2月~ 代議員を選ぶイベント(2月3日アイオワ州で最初の党員集会、2月11日最初の予備選挙が行われる)
- 3月3日 スーパーチューズデー(多くの州・地域で予備選挙・党員集会は開催)→選挙の山場
- 8月17日~8月20日 民主党全国大会 → 代議員の投票により民主党候補者決定
- 8月24日~8月27日 共和党全国大会 → 代議員の投票により共和党候補者決定
本選挙
本選挙も予備選挙と仕組みは同じで、「各州の一般有権者が各州の選挙人を選ぶ」→「各州の選挙人が大統領を選ぶ」という間接選挙になっています。
選挙人の人数は、上院議員の数(各州2名)と下院議員の数(人口比例)の合計になります。州以外にも首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)にも3人の選挙人が割り振られ、合計538人の選挙人がいます。
2020年は以下のスケジュールとなっています。
- 11月3日 一般投票 選挙人を選出
- 12月9日 選挙人投票 大統領を選出 → 大統領決定
- 1月20日 大統領就任式
11月の一般投票時点で、大統領はほぼ決まっていますが、稀に、「民主党候補に投票する!」と宣言していた選挙人が12月の選挙人投票で「共和党に投票する!」ということもあります。(=「不実な選挙人」と呼ばれます。1948年から2016年までにのべ16名不実な選挙人はいましたが、選挙の結果に影響を及ぼしたことはないです。)
選挙人を選ぶ仕組みは州ごとに異なり、ネブラスカ州とメイン州は、「上院議員の数に相当する2名の選挙人は、州全体の得票数が多かった候補者に与え、残りの選挙人は下院銀の選挙区ごとに1名ずつ得票数が多かったほうに与える」という方式をとっています。その他の州では「勝者総取り方式」を取っており、州全体で得票数の多かった候補者がその州の選挙人を全員獲得します。
カリフォルニア州は、55名の選挙人を抱える州ですが、得票数が僅差であっても、勝った党の候補者が55名の票を獲得することになります。
共和党と民主党の違い
政策
民主党はリベラル、共和党は保守派と言われており、主な考え方を下記のように纏めてみました。
私の整理の仕方は、民主党は「社会をより良いものにしよう!」というスタンスで。共和党は「いまある社会をしっかり守ろう!」というスタンスと考えています。アメリカはキリスト教道徳がマジョリティとなっており、社会通念となっています。そのキリスト教が人工中絶や同性婚を反対しているので、反対するスタンスです。また、アメリカは資本主義を推進することで成長してきた国家です。従い、資本主義を忠実に再現する「小さい国家」を標榜しています。民主党はその逆となります。
選挙戦略
支持基盤が違うので、それぞれの選挙戦略も異なり、以下の特徴があります。
民主党 →人口集中した都市部を基盤=選挙区を回って有権者に訴えることが肝要
共和党 →人口密度の低い農村部=メディアを介した情報発信が肝要
トランプ大統領は、共和党の候補者としてメディア、特にSNSを駆使して2016年の大統領選を戦い抜き、勝利しました。
各党の候補者は?
共和党 ドナルド・トランプ
共和党の大統領候補は、現職のトランプ大統領です。トランプ大統領は、1946年にニューヨークに誕生、1971年に父の不動産会社を継ぎ、「不動産王」への道を歩みました。若いころは民主党を支持しておりましたが、1987年に共和党支持に回り、2000年に買い買う等を経て、2001年に改めて民主党に鞍替えしました。その後、2009年にまた、共和党に戻るも、2011年に無所属になり、2012年に共和党に復帰した。これが示す通り、政治的立場はコロコロ変わっており、伝統を重んじた保守派でありつつ、都市のビジネスパーソンらしいリベラルな一面もあるようです。
民主党 ジョー・バイデン
民主党の大統領候補は、バイデン前副大統領(オバマ大統領政権時代)になります。1942年にペンシルバニア州で生まれ、大学卒業後、弁護士、群議会議員を経て、上院銀として、36年間上院議員として政治活動を続けてきました。
民主党は、急進派のバーニー・サンダース、エリザベスウォーレンや若手の逸材ピート・ブティジェッジなど多くの有力候補者が予備選挙に出馬しており、その苦戦の末に、バイデン前副大統領は、氏名を確定させました。
大統領選の争点は?
人種ごとの傾向
アメリカの人種別の人口構成は以下の通りとなっています。
白人 61%
ヒスパニック 18%
黒人 13%
アジア 6%
その他 2%
白人は、ホワイトカラー(=エリート)とブルーカラー(=プア・ホワイト)に二極化しております。ホワイトカラーは、高度な教育を受け、豊かな暮らしを送れている為、多様性を受け入れることに寛容です。結果、民主党を支持する傾向にあります。
一方で、ブルーカラーは、米国の製造業が衰退している中、貧しくなっており、現在の米国社会に不満を持っています。過去の白人主体の社会への回帰を求めており、しばしば過激な発言があり、共和党を支持する傾向にあります。
ヒスパニック、黒人、アジア系は、白人社会でのマイノリティとしての権利が尊重されるよう、民主党を支持する傾向にあります。
個人的には、全国民が投票すれば、バイデン氏が当選する気がしますが、ヒスパニックが「言葉の壁」により選挙に行けなかったりと、投票率次第では、トランプ氏優勢になる気もします。
宗教ごとの傾向
アメリカの宗教人口は、以下の通りとなっています。
プロテスタント 50%
カトリック 22%
ユダヤ 2%
モルモン 2%
その他 9%
無宗教 15%
プロテスタントも保守的な福音派(=共和党支持)と穏健なルター派・長老派(=比較的民主党は)などわかれます。カトリックの支持も共和党、民主党それぞれに二分されるので、宗教による選別はいささか難しそうです。
4大争点
争点として以下の4つが挙げられます。
- 税金
- 人工妊娠中絶
- 移民
- 銃の規制
①税金
民主党は、増税→富の再配分を目指しますが、共和党は、現行維持(=低い税率)を目指します。貧富の拡大は、情勢不安をもたらすので良いとは思えませんが、増税は景気を冷やす可能性があるので、コロナ禍の厳しい情勢では、共和党の政策が継続されることを個人的には望んでおります。
②移民
トランプ大統領の「国境の壁」発言で、一時注目を浴びましたが、トランプ大統領は、移民がアメリカ人の雇用を奪わない為に、移民を制限することを望んでおります。(実際は、壁の効果は非常に小さいですし、トランプ大統領が建設を支持した壁はほんの一部)
一方で、民主党は、マイノリティ尊重、多様性重視を掲げ、移民の支持を持っております。
③同性愛・人口妊娠中絶
同性愛・人工妊娠中絶を、共和党は反対、民主党は賛成、ということでそれぞれの基盤を確保しています。
④銃の規制
共和党は銃規制を反対する人が多く、民主党は銃規制を賛成する人が多く、全米ライフル協会(NRA)が共和党支持姿勢が強いです。
以上、いかがでしたでしょうか?
各党の候補者も決まり、いよいよ本選挙に向かいます。今回の記事で、みなさんが大統領選をより、楽しめるようになると非常にうれしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考にさせて頂いた本は以下です。