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最近話題の「SDGs」「ESG」を投資家目線で考察してみた

テレビCMや新聞広告などでSDGsやESGといったワードを目にする機会が増えてきております。また、多くの企業が”SDGs、ESGを意識した経営”というのを骨子に掲げており、この2つの言葉は個人投資家としてしっかり理解しておかなければならない言葉だと思いました。今回は、SDGs、ESGといった観点をどのように投資に生かしていくかを考えていきたいと思います。

 SDGs、ESGとは?

SDGsとは、「Sustainable Development Goal s 」の略になります。日本語に訳すると「持続可能な開発目標」ということで、国連が17の目標を採択しております。SDGsの特徴は、目標だけが設定されており、手段は決められておりません。従い、企業や政府にその手段は任されております。(進捗の評価・レビューに関しては、ルールがあります)

ESGとは、「Environment」「Social」「Governance」の略になります。この言葉がどのように出てきたのかはわかりませんが、ESGを意識した経営(=ESG経営)、ESGを実践している企業に投資(=ESG投資)、といった具合に使用されます。

SDGsとESGは根本の発想は同じなので、それぞれを明確に定義する必要はないと思いますが、私の理解では、

「SDGsに則った目標を掲げ(→未来)、ESGを意識した経営(→現在)をする。」

といった具合に、SDGsが未来について語っているのに対し、ESGは現在に焦点をあてているように思います。

SDGs、ESGの動向

脱炭素社会の実現を発表

SDGsの目標13に”気候変動に具体的な対策を”というものがあります。一例としては、「炭素の排出過多により、温暖化が起きている為、炭素排出の少ない社会にしましょう」といったものです。

日本では、2020年10月26日の菅総理による所信表明の中で、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と宣言されました。この発言に対して、トヨタ自動車社長の豊田章男氏がコメントしたりと色々話題になっております。

脱ガソリン車への動き

2020年11月17日にガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表しました。当初”2040年まで”としていた目標を2020年2月に”2035年まで”と前倒しにし、更に前倒ししたことになります。フランスも”2040年まで”に新車販売を禁止、他にもカナダやスペイン、カリフォルニア州でも同様の動きが起きております。

ベトナム火力発電事業に公開質問状

日本とベトナム両政府の経済協力に基づく国策案件で、三菱商事、国際協力銀行、みずほ、三井住友、三菱UFJが参画する石炭火力発電所建設”ブンアン2”に対して、日本の学生が公開質問状を提出しました。それに対して、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが賛同したり、大きな話題を集めています。

SDGs、ESGって儲かるの?

このように色々話題になっているSDGs/ESGですが、営利企業としては、利益を追求しなければならない為、「儲かるのか?」という視点が必要になってきます。その点について、解説していきたいと思います。

短期的にはもうからないが、、、

SDGsを達成する為には、変革が必要であり、その変革にはコストが伴います。例えば、ガソリン車生産をEV生産に切り替えるにあたっては、電池の調達、安全性の検証、生産ラインの組み換えなどコストがかかります。従って、変革コストはかかりますが、将来的には、政府がガソリン車の新車発売を禁じるなどの方針を掲げており、今変革をしないと、将来のリスクを抱えることになります。

また、事業資金を調達するにも、投資/融資が集まらない可能性があります。例えば、GPIFは投資に際して、ESG指数というのを用いて、一定のESG経営が行われていないと投資対象から外れてしまいます。

短期的にはコスト増になり、利益を圧縮する可能性のあるESG経営ですが、着手しないと、将来的なリスクとなります。政府機関や消費者が”持続可能な社会”を目指している状況下、企業はそれに従わなければならないのです。

中長期的には儲かる可能性がある

ESG経営はやっかいなもののように思われますが、ESGに配慮しない社会は存続しえない可能性が高い為、ESG経営は実践しなければなりません。一方で、ESG経営を推進すると、利点があります。

まず、資金が集まりやすくなります。ESG格付機関から高い評価を受けた企業は、年金や保険を運用する政府系機関の投資を集めやすくなりますし、銀行からの融資が受けやすくなります。

次に、人材を集めやすくなります。ミレニアル世代という若者のESGに対する機運はますます高まっており、ESGを意識した企業で働きたいという人が増えてくる可能性があります。

他にも、ESGに配慮した商品は、競合商品と差別化を図れる可能性もあります。SDGs目標14に”海の豊かさを守ろう”というものがあります。これに配慮して、水産物の中では"MSC""ASC"といったエコラベルが浸透してきております。このエコラベルが張られた商品は、資源管理をしっかり行った商品とアピールでき、競合商品と差別化が図れます。昨今の、SDGs/ESGというものは、リスクでもチャンスでもあるのです。

 

個人投資家としてどのように動くべきか?~まとめ~

SDGs、ESGが意識された社会ではお金の動きが大きく変わります。最近の約50年は石油の世紀でした。結果、石油によって蓄財してきた産油国のファンドが大きな力を持っていました。

※世界の政府系ファンドTOP10の内、半数がオイルマネー関連

ノルウェー政府年金基金

アブダビ投資庁

クウェート投資庁

サウジアラビアPIF

ドバイ投資公社

しかし、SDGs、ESGが意識された社会では、石油で大きく蓄財することが出来なくなると、同ファンドが運用成績を出す為には、株式・不動産などのリスク資産への比重を大きくしていかなければなりません。こういった大きな買い手が株式市場に現れることを想定すると、しっかり、株式に投資していくことが肝要だと思います。

また、SDGsの達成に向けて「ルールがない」ということもポイントの1つです。「目標は設定されているが、どのように達成するかは、企業の皆様にお任せします。ただ、評価は色々な機関でやりますよ」というのがSDGs、ESGが意識された社会なのです。

 つまり、企業ごとの差が付きやすい状況だと思います。そして、ファーストペンギンが一番恩恵を受ける社会だと思います。一番最初に”脱炭素を目指します”という会社は、脚光を浴びますが、二番煎じは良い印象を与えますが、大きな脚光は浴びません。

 その意味で、まだSDGs、ESGが浸透していない社会の中で、率先垂範している企業への投資をすべきだと思います。

以上、纏めますと、

・株式市場に大きな買い手が現れるので、しっかり株式で運用すること

・ESG経営を率先している企業へ投資すること

・各セクターでESG経営を率先しているファーストペンギンに投資すること

というのを私は考えております。

以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。